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2024.12.04

「東急ホテルズ&リゾーツ様 STREAM HOTELのブランディング・CI/VI」GOOD DESIGN AWARD受賞記念対談(前編)

写真左から:武市美穂、佐藤ヒサオ、小川丈人
(写真左から:武市美穂、佐藤ヒサオ、小川丈人)

もうすぐ終わりを迎える2024年は、私たちナディアにとって、創業20周年を迎える大きな節目となる一年でした。
この年に、東急ホテルズ&リゾーツ様との「STREAM HOTELのブランディング・CI/VI」の取り組みにおいて、ナディアとしては、初となるグッドデザイン賞を受賞することができたのは、大変嬉しいニュースとなりました。
そこで、プロジェクトを担当したExecutive Creative Director 小川丈人(以下、小川)、Creative Director 上田和実(以下、上田)、Art Director 武市美穂(以下、武市)、Producer 佐藤ヒサオ(以下、佐藤)の4名で、取り組みを振り返り、2024年を締めくくる対談を実施しました。
その様子を前後編2回の配信に分けて、ご紹介いたします。

対談者のプロフィール

グッドデザイン賞受賞の感想

佐藤 私たちの仕事は、デザインを通してクライアント様の課題解決を第一に取り組んでいくことなので、今回の受賞のように、私たちがクライアント様と一緒に評価していただける機会は、あまりありません。まず、クライアント様との連名でアワードに応募させていただいたこと、そして、その取り組みが外部の方から評価されたことを非常に嬉しく思います。さらに、今回の受賞を受けて、これからのクライアント様との向き合い方についても、身が引き締まる思いがしました。皆さんはいかがですか。

武市 グッドデザイン賞というアワードは、デザイン性に重きを置いて評価されるアワードというイメージがありました。そのため、今回の取り組みをどこまで評価してもらえるのかが、少々不安でした。しかし、「INSPIRATIONAL LOCAL」のコンセプトや、そのコンセプトの考え方がアメニティやインナーブランディングの施策にきちんと落としこまれている点を評価していただくことができ、とても嬉しかったです。

上田 2024年のグッドデザインのテーマは「勇気と有機のあるデザイン」でした。このプロジェクトもまさに、前例を打破する「勇気」と、人のつながりがつくる「有機」に恵まれたプロジェクトだったと思います。クリエイティブチームやクライアント様である東急ホテルズ&リゾーツ様、STREAM HOTELのスタッフやお客様、これらの多くの人々が「有機的」に関わりながら、一体となってこのコンセプトを実現することができました。

小川 今回のこの取り組みは、東急ホテルズ&リゾーツ様としても、新たな挑戦だったと思います。既存のブランドラインではなく、新しいブランドラインである「ライフスタイルホテル」を作ろうと、大きなチャレンジをされる時に、そのパートナーとして私たちを選んでいただけたことを、とても誇りに思います。
そして、私たちもその気持ちに応えたいという一心で、関わったメンバーは全力で取り組んできました。ホテルの宿泊数も大きな盛り上がりとなっており、また、そのような結果に紐づいたアウトプットを私たちができたことが、とても嬉しく思います。さらに、副次的なことになりますが、その取り組みが、グッドデザイン賞にて評価されたということで、私たちの取り組みは間違っていなかったと確認できたように思います。そして、私たちがコンセプトベースからブランドメッセージを作り、最終的にはアクティベーションの部分まで落としこんだことも評価され、とても嬉しかったです。

対談の様子
(写真右:京都オフィスからリモート参加の上田和実)

新たな「ライフスタイルホテル」へのチャレンジ

佐藤 この取り組みがスタートした当初は、新たなブランドラインが立ち上がることは、まだ決まっておらず、札幌で新規開店を予定しているホテルのブランドムービー制作のご依頼でした。
その後、新しくSTREAM HOTELというライフスタイルブランドを誕生させるというお話をいただいたのが2022年12月。これから開店する札幌のホテルと、既に開店している「渋谷ストリームエクセルホテル東急」を、一つのホテルブランドとして新たに立ち上げる大きなプロジェクトでした。一方で、そのころ東急グループ様では「DISTINCTIVE SELECTION」として歌舞伎町タワーにある「HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel」や「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」のように、単独型のホテルが次々とオープンしており、話題となっていました。
そのような中で、私たちが担当するブランドは、全国展開型のホテル。ブランドとしての統一感を考えると、なかなか難しいお話をいただいたと思いました。上田さん、いかがでしょうか。

上田 「ライフスタイルホテル」自体、曖昧ではっきりと定義されたものではなく、店舗によっていろいろ姿形が異なる自由度があります。捉え方も表現の仕方もある意味自由。そのため、何をどのように、来店されるお客様に共感してもらうかという点に、最初は難しさを感じました。

小川 この取り組みでは、一番最初に、プロデューサーの佐藤さんを中心に、徹底的なリサーチを実施しました。そのおかげで、ホテル業界についても深く理解することができ、ベースをしっかり固めることができました。また、このベースを固める段階で、クライアント様ともたくさん議論することができました。その過程を経たうえで、Creative Directorの上田さんやArt Directorの武市さんが活躍するフェーズに進められたことが良かったと思っています。

佐藤 リサーチについては、東急ホテルズ&リゾーツ様、さらには東急グループ様の歴史を紐解いて、普遍的な価値を見いだしていくことが大切だと思いました。また、ホテルがある「渋谷」「札幌」という土地の特徴や、この先10年どのように街が変化していくか、旅をする人たちのインサイト、顧客ターゲットなどを徹底的に調べ上げ、その内容について、本社のブランド担当者や両店舗の支配人、店舗スタッフの皆さんなど総勢10人ぐらいでワークショップも実施しました。
このフェーズを武市さんはどう見ていましたか。

武市 私は、こちらからの一方的な提案は、ちょっとしたズレも大きく感じられてしまうことがあると思っています。そのため、このような形で早い段階から多くの方を巻き込んで進められると、その後の進行も円滑になりました。

対談の様子_武市美穂
対談の様子_佐藤ヒサオ

ブランドメッセージ「INSPIRATIONAL LOCAL〜見違えるローカル、叶えるローカル〜」の誕生

小川 私たちがブランド構築を手がけるにあたって、まずは「Deep Community」という事業が掲げるコンセプトを軸に、宿泊されるお客様に向けた、より強いメッセージが必要だと思っていました。
そこで上田さんが「INSPIRATIONAL LOCAL〜見違えるローカル、叶えるローカル〜」というコミュニケーションコンセプトを生み出してくれました。このコンセプトは、展開型ホテルでありながら、個性を持ったコンセプチュアルなライフスタイルホテルであるということを的確に表現できたと思っています。

上田 旅行者が地域のカルチャーに入り込むという「Deep Community」が宿泊者にとって、どんな価値になるかということを定義することが、ブランドの輪郭を作り出すことになると考えました。

ブランドメッセージ「Inspirational Local~見違えるローカル、叶えるローカル~」
ブランドメッセージ「Inspirational Local~見違えるローカル、叶えるローカル~」

着目したのは「ローカル」という言葉です。「地域」や「地方」、「地元」などを表しますが、その言葉にはどことなく「田舎」、「古臭い」というニュアンスが漂います。一方で、コロナ禍を経て人々の価値観は大きく変わり、若い人が都市部ではなく郊外の暮らしを求めはじめたり、伝統や自然の価値が見直されたり、そこから新しいビジネスが生まれたりと、今、地方は「これから何かしてやろう」というエネルギーで溢れています。
つまり、「ローカル」や「伝統」「風土」は捉え直すことで、この混沌とした時代を生きる私たちに今とても「新しい」視点を与えてくれるものではないかと考えました。そして、その視点を体験として伝えることが、このブランドなのではないかと考え「インスピレーション」+「ローカル」という言葉に辿りつきました。

小川 東急グループ様には、地域を開発すると同時に、文化も創出するというDNAがあります。渋谷はもちろんのこと、二子玉川をはじめとした東急沿線でそれが実現されています。そのDNAを持っている東急グループ様だからこそ、「INSPIRATIONAL LOCAL〜見違えるローカル、叶えるローカル〜」というブランドメッセージを提案したときに、クライアント様に、強く共感してもらえたのだと思います。

上田 まさに東急グループ様だからこそ、しっかり自信を持って言えるブランドメッセージなのだと思っています。

次回、後編では誕生したブランドメッセージ「INSPIRATIONAL LOCAL〜見違えるローカル、叶えるローカル〜」をどのように表現したのか振り返ります。
対談記事(後編)はこちらから

編集:川副信雄 撮影:阿部隼輝、髙橋亜季(株式会社ナディア)